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官能小説家のリアル
第2章 悩み
そのしわ寄せが後でくるのは、美波にも分かっていた。それでも、今は彼と一緒に過ごしたい。
「一時間あれば……」
「何?」
直哉の言いたいことは、美波も察しが付いていた。
「ベッド行く?」
「一時間以内に、バイク便が来るんだってばぁ」
絡めてきた直哉の手を、美波は優しく解く。
「んー。途中で出てもいいけど、そんな時の顔、バイク便のヤツに見せたくないなあ。それって、男だろう?」
「殆どね。女性もたまにいるけど」
「じゃあ、ガマンする」
美波は「何を……」と思ってしまった。昨夜もセックスしたのに。
小説の中で、“セックスだけが愛情ではない”ということを書く時もあるが、美波はそれも愛情表現の一つだと思っている。勿論それだけではないが、“それだけ”で愛情が伝わる時もあると思っていた。
好きだから求め合う。
それは、大人の恋人同士として普通のこと。
一緒にテレビを観ていると、暫くしてインターフォンの音。
エントランスのロックを解除してバイク便の男性を玄関まで招くと、帰るところまで直哉が後ろで見ている。
「何してるの……?」
「男がいるってアピール」
溜息をつきながらも、美波は内心嬉しいと感じた。
勿論美波は今、彼以外になびく気はない。それなのに、あからさまなやきもちと心配。
「見せて、見せて」
「え?」
「原稿。校閲の原稿」
ちょっと意味が違うと思いながらも、リビングで中の原稿を渡した。
「……やらしい。やらしいなあ、美波って」
校閲が入ったことより、直哉はセックスシーンを読んでニヤニヤしている。
「書くより、本物の方がいいだろう? しよう?」
「ちょ、ちょっと」
まだ宵の口。それなのに、美波はベッドで喘がされることになってしまった。