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官能小説家のリアル
第2章 悩み
ドリンクバーだけを注文し、美波に見られないようにコーヒーを持って来た。
美波はスケジュール帳に何か書き込んでいる。
そこへ、背の高い男。丁寧に挨拶をしてすぐに座った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「みなみ先生。またお会い出来て嬉しいです」
頭を下げてから、飯野が席に着く。
“先生”という言葉に反応したのか、隣の席の若い男性達がチラチラと見る。
「先生は、やめてください……」
「では、みなみさんで」
飯野は、PNの“みなみ”しか知らない。
「飲み物を、どうぞ……」
美波に言われてドリンクバーを頼むと、飯野は美波に断ってから取りに行った。
その間、美波は溜息しか出て来ない。まさか直哉に見られているとは夢にも思わずに。
コーヒーを持って来た飯野が席に着く。飯野からはイベントでもらったが、取り敢えず名刺交換。一応の礼儀として、美波も名刺を持っている。
「月刊Mは、来月創刊の雑誌なんです。男性向けの官能小説と、漫画が半々で。連載も可能ですので、是非お願いします」
飯野が頭を下げる。
隣の男性達は話を聞いているらしく、二人の方を見ては何か小声で話していた。
「ですから。私は、そういったジャンルは……」
「先生なら大丈夫です。色々な雑誌を拝見しました。官能描写がリアルで、男性にも受けると思います」
美波は、また“先生”と言われることより、隣からの視線が気になっている。飯野が普通の音量で、“官能描写”などといっているせい。
「飯野さん。もう少し、声を控えめに……」
「あっ、すみません。先生にお会い出来た感激もあって……。とにかく、お願いします。僕を助けてください。いい作家さんが足りないんです」
飯野はまた、普通の声の大きさに戻って行く。
美波も、開き直るしかなった。