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官能小説家のリアル
第1章 新しい仕事

『先日、A賞に選ばせて頂いた作品ですが。その作品でデビューしませんか?』
「え……」
「手直しはして頂きますが、勿論、お手伝いします。一緒に頑張りましょう」
「は、はい……。ありがとう、ございます……」
その後美波は、泣きながら小林という女性と話しをした。
――― ――― ――― ―――
デビューから八年が経ち、美波は“みなみ”というPNでBL作家として忙しい日々を送っている。
改稿して掲載されたデビュー作から好評で、他の雑誌から同人誌のイベントでスカウトを受けた。それも好評となると、次々オファーも来るように。自分でスケジュールを組みながら進んで来た今、出した新書(単行本)の数も正確には覚えていない。
仕事上家族とはスケジュールが合わなくなり、五年前から1LDKで一人暮らし。執筆は静かな夜に集中しやすく、どうしても生活が夜型になってしまう。
インターフォンが鳴り、美波は手を止めて画面を見る。
相手は、一年前から付き合っている相良直哉(さがらなおや)。
すぐにインターフォンで応対し、オートロックを解除した。
「ただいま。今日、残業でさあ。弁当買ってきたけど喰う?」
美波のマンションの隣にはコンビニがあり、彼女もよくそこを利用している。
「うん。ありがとう」
“ただいま”とは言ったが、直哉のマンションはここから電車で二十分。日付が変る頃ここを出れば、最終電車に間に合う。
今は21時。丁度、美波もお腹が空いてきた。
リビングへ行き、温めた弁当を二人で食べる。
直哉と知り合ったのは、本当に偶然。
一年と数ヶ月前、専門的な分野を書こうとしていた美波は書店へ行った。ネットではいまいち数が少なく、専門書が欲しかったため。他にも使えそうで手元に欲しかったし、経費にもなる。
そこに漫画を買いに来ていたのが直哉。
美波が買った本と漫画がレジで入れ替わり、それに気付いた店員に言われて美波が直哉を追いかけた。その時直哉にお茶に誘われ、男性の仕草に興味がある美波はお茶だけならとカフェへ。

