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官能小説家のリアル
第2章 悩み
デビューの時は、400字詰め換算で1ページ1800円。勿論詰めて書くわけではなく、「あんっ」という声だけで改行する。通常の改行も同じで、セックスシーンになるとページも早く進む。
それでも、自分の作品に値段がつくことが嬉しかった。
「まずは、プロットをお願いします」
飯野が頭を下げる。
「はあ……」
「ありがとうございます! PNは、ゆっくり考えてください」
美波の溜息混じりの声を“了承”と取った飯野が、また頭を下げた。
「すみませんが、編集部で待ってる者がいるので、これで失礼します。後日、ご連絡します」
立ち上がって頭を下げると、飯野はそのまま行ってしまう。
「え……」
それきり、美波は声も出ない。
それを直したのは、直哉の姿。
「直哉。何してるの?」
怒った表情で、直哉が飯野のいた椅子へ座る。
「誰だよ。あいつ」
「編集さん……」
美波は、今はそうとしか言えなかった。
「編集って、全員女だろう?」
「直哉。家で話そう? 私も、ちょっと、混乱気味だし……」
“先生”や“官能”という言葉の後は痴話喧嘩かと、隣の客は飽きない。
「だから何が」
「とにかく帰ろう? もう帰りたい」
納得がいかない直哉を何とか連れ、二人で美波のマンションへ行った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
美波はリビングで、飯野にイベントで会ったところから直哉に話した。
最初は不機嫌だった直哉も、それを聞いて納得してくる。
「男性向けでも、やらしいのは一緒だろう? 担当が男なのは、ムカつくけど。女に変えられないの?」
「あのねえ。BLは、男同士でやらしいの」
美波は直哉の言葉を借りて説明を始めた。
「知ってるよ。それくらい」
直哉が口を尖らせる。
「でもね。男性向けは、男女なの。あー。レズビアンならありかもだけど。だから結局、その……」
「何? 帰り際に見たけど、あいつイケメンだったじゃん。それがムカつくんだよなあ」
直哉の興味は飯野へ向いていた。
「美波がいつも言ってるじゃん? 来る仕事は、断らないって」
「だけど……」