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官能小説家のリアル
第3章  決心


 裸にされ、どこをどうしたのか分からないうちに、美波は身動きが出来なくなる。
 後ろ手に縛られ、ベッドへ転がされた。
「直哉っ。冗談でしょう? やめてよ」
「結構いい眺めかも……」
 直哉も服を脱ぎ、動けない美波に覆い被さってくる。
「ヤぁっ、直哉ぁっ」
 やっと視界に入る自分の乳房は、ネットのイラストで観たように強調されていた。
 男性によっては、支配欲から縛ることを望む。特にSMプレイが好きでなくても、緊縛だけは別だとネットにあった。
 それを読んでいた美波は、直哉が一緒に暮らしたいと言っていたのも思い出す。
 実際に縛るわけではないが、自分の目の届く範囲に置いておきたい。そう思われるのは、女性にとっては嬉しいこと。美波もそれは分かる。
 でも、本物の緊縛プレイはまた別。
 相手が好きな直哉でも、恐怖が先に立つ。
 酷いことをしないとは思っている。
「直哉? 落ち着いて? 取り敢えず、解いて。お願い」
「そういう顔も、たまんないなあ」
 そのまま乳房を揉まれるが、恐怖から喘ぎ声も出ない。それどころか、気持ち悦いとさえ感じなかった。
 いきなりだから?
 美波はそう考える。
 これに慣れれば気持ち悦くなれて、直哉ももっと満足してくれる?
 そう考えても、やはり初めては怖い。
 処女のような思いで目を閉じると、スマホの目覚まし音が聞こえた。
 思い切りベッドから起き上がる。
「夢……?」
 今は昼の12時。直哉は会社にいるはず。勿論、部屋に彼の姿は無い。
 縛られても、裸でもなかった。
 美波は普段よく、第三者的な夢を見る。
 色々な夢だが、そこに自分は参加していなく、言わば“神目線”の夢。
 男同士のセックスシーンの夢も見るが、やはり第三者で二人は何も気にせず続けている。だから美波も、ただ見ているだけ。
 それなのに、自分が直哉に縛られる夢だなんて。
 美波は、ベッドに座ったまま溜息をついた。
 そんなシーンを書かなくてはならない。それを現実として約束してしまった。
 もう一度大きな溜息をつき、美波は風呂へ行った。


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