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官能小説家のリアル
第3章  決心


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 受け付けで記帳する時は、横に本名も書く。でも次に書く人に本名が分からないように、そこだけは係の編集が紙を載せて押さえている。
 今日は、雑誌Mの創刊記念パーティー。
 記帳を終えると、スーツ姿の男性に会場へと案内された。
「お楽しみください」
「ありがとうございます」
 立ち去る男性に軽く礼を言ってから、美波は会場内を見渡した。
 ホテルの一室だが、広めで飾り付けも豪華。正面に当たる中央には、ステージが用意されている。
 他の出版社のパーティーに何度も参加しているが、その中でも豪華な方。
 招待状が届き飯野に連絡すると、「是非、参加してください」と言われてしまった。
 秋も近くなり、年末進行まではまだ間がある時期。美波にしては忙しくなく、興味もあって参加してみた。
 今日は、このためにネットで買った薄いブルーのワンピース。低めのハイヒールと薄手のジャケットが白だから、差し色にとバッグは赤。髪は美容院でアップにセットしてもらい、横に後れ毛を残してもらった。
「みなみ先生」
 近付いて来たのは、スーツ姿の飯野。
「いらしてくださったんですね。今日は楽しんでいってください。何かあれば、声をかけてください。会場内にいますので」
「はい」
 頭を下げた飯野は離れた場所へ行き、別の者に挨拶をしている。
 男性向けの雑誌のせいで、招待客の作家も男性が殆ど。
 自分が該当する性別のセックスシーンを書くのは、どんな気持ちなのだろう。美波はふと考えた。
 美波が今まで書いてきたのは、自分とは違う性。男性同士のセックス。同じ性なら、経験や願望だろうか。訊いてみたいが、そこまでの勇気は無い。
 飯野は以前、BL作家もいると言っていた。美波が知るBL作家は、全て女性。でも、女性の姿は数える程度で知らない顔だった。
 複数の出版社でBLを書く美波は、その業界なら顔見知りも多くいる。出版社のパーティー自体減ったが、参加すれば知り合いも多く、その前に連絡を取り合い一緒に来ることも出来た。


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