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官能小説家のリアル
第3章 決心

母体がTという大きな出版社なら、失敗してもそう痛くはないだろう。でもどちらなのか、今は美波にも分からない。
一通り挨拶が終わると編集がやって来て、数字の書いた紙片が配られた。
抽選会の始まり。
商店街の福引で使うような多角形の器具が回され、出た数字が当選者。
十等賞まであったが、美波は三等賞で呼ばれて驚いた。
桜子は“凄い”と喜んでいるが、ラッキーではない。美波が驚いたのもそう。
出版社のパーティーで景品が渡るのは、大概雑誌に貢献している順。どんなものかは知らないが、細工がしてあるはず。
月刊Mは来週創刊だから、美波は期待度として取った。
PNを変えれば、無名の新人。それなのに三位となると、美波は改めて気合が入る。
何にせよ、文章を書くなら手を抜きたくはない。そういったところには、プロ根性が出てしまうもの。
ステージで受け取った目録は、BR(ブルーレイ)プレイヤーだったから、送ってもらうことにした。美波は持っているから、直哉にあげてもいい。
二次会は、数階上のラウンジ。もう帰ったのか、美波と桜子の他に女性はいなかった。
やると決めたら、美波は肝が据わる方。
周りをよく見ると、わりと若い男性ばかり。大きなソファーで同席となり、話もした。
「みなみ先生。あの……。メールしても、構いませんか……?」
おずおずと訊く桜子に、美波は笑顔で頷いた。
美波が渡した名刺には、パソコンのメールアドレスも明記してある。
小説と漫画だが、同じジャンルに入ることになる。知り合いは多い方が何と助かる場合が多い。
全てが終わると、途中まで桜子と一緒に帰った。
そこからは一人。
電車の窓からの風景を眺めながら、美波は改めて頑張る決意をした。

