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官能小説家のリアル
第3章 決心

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「あんっ、はぁっ」
直哉の動きに翻弄されながら、美波は背中を反る。
会社帰りに寄った彼とコンビニ弁当で夕食を摂った後、ベッドへ。
直哉からしても、恋人同士ならセックスは当たり前。
美波も、今更まどろっこしい手順はいらない。ムードだってベッドに誘わる時の彼の視線だけで構わない。
好きだから求め合う。
お互いに、それが自然だと思っている。
「あぁっ、直、哉っ、んんっ」
グラインドに内壁を擦られ、甘い熱が生まれていく。それがすぐに熱さと大きさを増し、美波を止めどない世界へと誘(いざな)う。
「あんっ、もうっ、はぁっ、んっ、イくぅっ! あぁっ……」
震える体が弛緩していくまで、美波は頭のどこかで考えるようになってしまった。
これが男女のセックス。
勿論美波に、男同士のセックスは経験出来ない。
考えてみれば、身近に材料がある。
直哉の指の動き。舌の動き。愛撫されながらその様子を目に浮かべ、小説の参考とするようになっている。
彼が放出したものの味や匂い。それも、女性だからこそ表現出来ることがあるはず。
とは言え、セックスの全てを覚えているわけではない。
全てそのままを書こうとも思わない。
息遣いの聞こえるようなセックス描写。そこを目指していた。
飯野へ送ったプロットが通り、執筆に入っている。
初稿最終締め切りまで三ヶ月もあった。小説を書き慣れている美波に120ページ前後書くには充分すぎる期間。
それでも、問題はセックスシーン。
他の部分は、もう頭の中では文章も出来上がっている。
新卒青年と年上女性の、秘密の主従関係が軸。緊縛シーンは冒頭からあり、美波は直哉には話さずに書いていた。
何か仕事をしているのは彼も知っている。以前“男性向け”の話もした。美波は、それ以上話す必要は無いと思った。
直哉の言う“やらしい”内容。それが男同士から男女になっただけ。
男女のセックスだと強調すれば、彼も何か気にするかもしれない。美波はそう考えていた。
勿論、BLの仕事がメーン。

