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官能小説家のリアル
第3章 決心

依頼は次々入るが、月間Mの仕事より後のスケジュールにしてもらっている。
それでも、同時進行なのは変わらない。男女のセックスシーンを書いては、BLのストーリーへ。その後また男女のシーン。さすがの美波も、こんなことは初めて。そもそも、男女を書くのが初めてのせい。
BLの同時進行なら、何本でも平気だった。混乱することも無く、すぐに頭を切り替えられる。
男女が挟まると、そうもいかない。ファンタジーの世界から現実へ戻されるようなもの。
一度紅茶を飲んで頭を切り替えることもしばしば。
考えた末、PNは“みなみ”のまま。言ってしまえば、同じ“エロ”。そう考えると、BLでのファンも幻滅はしないだろうと思った。
それを飯野へ連絡すると、早速雑誌には“みなみ”の名前が載った。
“あのみなみ先生が緊縛特集に登場予定!”というもの。
編集長直々にスカウトしたのだから、期待はされていると思う。それなら、期待以上のものを書いてやると美波も意気込んでいた。
とにかく早く初稿を上げて、送ってしまいたい。初めてのジャンルだから、直しも多いかもしれない。官能シーンが耽美すぎるかもしれない。美波もそう考えていた。
創刊された月刊Mは発売日より前に届いている。それを読んだ限りでは、色々なテイストの作品がある。ギャグのような作品から、本格的でハードなものまで。
飯野は自分がBLで長いと知っていてスカウトした。それなら、耽美なテイストでもいいという意味だろうと、美波は考えている。
とにかく、プロットにOKが出たならその路線でいく。
そう決心した美波に残った問題は、セックス描写だけ。
直哉には悪いが、つい観察してしまう。そのせいでセックスに没頭出来なくなり、時にはイった振りをすることもある。
そんな自分だけは嫌になって来たところだった。
今日は本当にイけたが、毎回そうでいたい。
「美波? どうかした?」
「ううん。何でもない……」
美波は直哉の胸に顔を埋めた。
セックス中もいいが、こうしている時間も好き。それは、彼が好きだから。

