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官能小説家のリアル
第4章  戸惑い


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 一緒にデリバリーでの夕食を摂っていると、直哉が何か考えている様子。
「どうしたの?」
「んー。美波、なんか欲しい物ある?」
 考えたが、美波には元々物欲が無い。
 欲しいのは、小説のアイディアや語彙力。そういった、“物”でないものばかり。
「この前、BRプレイヤーもらったじゃん? ボーナス出たら、お返ししたいなあ、と思って」
「あれは、パーティーの景品だもん。私、持ってるから、二台もいらないでしょう?」
 仕事の邪魔になるため、仕事部屋兼寝室にテレビは置いていない。リビングに一台だけなのに、プレイヤーが二台も必要ない。
 友達の漫画家はテレビや音楽を流しながら仕事をすると言うが、小説家には無理。関係無い声が聞こえると、自分の打つ文字に集中出来なくなる。
 流すとしたら、オペラ系ではないクラッシック曲になってしまう。そのせいで、美波はわりとクラシック曲が好きな方。うんちくは苦手だが、小説に曲名を出すこともある。静かなクラッシック曲が流れる中での、セックスシーン。耽美なBLにはピッタリだと思っている。
「ボーナスって、まだ先でしよう? 自分のために使えば?」
「ん……。美波の方が、年収高いもんなあ……」
 直哉が溜息をつく。
 美波は、その話題が苦手だった。
 恋人より年収が高い。悪い気もするが、美波はフリーランス。何の保障も無い。それを考えると、稼げるうちに稼いでおかないと、行く末が不安。
「ねぇ。ネックレスが欲しい。小さくて可愛いの」
「小さいのって、気を遣わなくてもいいのに……」
「そうじゃないよ。大きいネックレスが合うような格好、しないもん。普段使い出来るやつがいい」
 それは美波の本心。
 お洒落など、出版社のパーティーくらい。それでも、小さいネックスが似合うようなワンピース。
 会社に出勤するわけでもない美波は、普段使い出来る方が嬉しい。
「ホントに?」
「うん。あのね。直哉からのプレゼントなら、何でも嬉しいよ……」
 その言葉に直哉のスイッチが入ってしまったが、美波は両肩を抑えて止めた。


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