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官能小説家のリアル
第5章 関係
「では……。編集部へ戻りますので。失礼します」
飯野の乗ったタクシーのドアが閉まる。
「美波っ! 何してたんだよ。そんな格好して」
直哉が近寄ってきた。
「あいつ、前のイケメンだろ? ファミレスで会ってた」
「そう。担当で、編集長だから……」
「編集長?」
直哉が来るとは思わなかった。美波も残業だと聞いていて、彼の昼休みに「会いたいね」と電話していたばかり。
「打ち合わせで……。」
「パソコンは? いつも持ってくだろう? 打ち合わせの時は。それに、そんなお洒落して。……お前。呑んでる? 打ち合わせで、酒呑むのかよ!」
「直哉。ここじゃ……。中に、入ろう?」
美波も仕事の結果のことで不安になっていて、気持ちに余裕がなかった。
取り敢えずマンションの部屋へ行き、リビングへ座る。
「あのね、直哉……」
「何なんだよっ。パソコンも持たずに、こんな時間に。おしゃれまでして。あいつと会うためか?」
「違うの!」
勘違いして行った経緯は長い。メールを流し読みしただけでなく、初稿の打ち合わせの時に飯野に質問してしまった件もある。
「ビール、呑む? ゆっくりと……」
聞いて欲しい、と続けようとしたが、直哉に腕を掴まれた。
「編集長とオレみたいな平社員なんて、比べ物にならないよな」
「そんなこと、関係ない」
直哉はいつも、美波の方が収入がいいのを気にしている。自分の不甲斐なさを。だから、本当に言いたいことも言えないでいた。
美波はそれを感じなから、収入については気が引けていた。でも彼女は、恋人にお金やステイタスを求めていない。
美波の腕を掴んだまま、直哉が俯く。それが彼女には、泣くのを堪えているように見える。
「直哉。私は、キャっ!」
急に立ち上がった直哉が寝室へ行くと、乱暴に美波をベッドへ投げた。
「嫌っ!」
「嫌なのかよ!」
和真が馬乗りになり、美波のスカートを捲り上げる。
下着を降ろそうとするのに抵抗しようとすると、美波はその手を払われた。