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官能小説家のリアル
第5章 関係
もしかしたら、それが美波には重かったのかもしれない。そんな風に考えてしまう。
酷いことをしてしまった。
今になって、後悔が沸く。
もう、会えないかもしれない。
そう思い、直哉は声を殺して泣いた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
シャワーを浴びた美波は、パソコンの前へ座った。
「仕事、しなきゃ……」
自分に言い聞かせるように呟き、立ちあげておいたパソコンを操作する。
飯野からのメールを確認すると、確かに打ち合わせとは書かれていなかった。
デートとも書かれてはいないが、誘いに応じて個人的に会ったのと同じ。飯野はそう思っているだろう。
小説の画面へ切り替えようとした時、飯野からのメール。
添付ファイルを開くと、挿絵のラフ画が数枚あった。
ラフと言ってもトーン(スクリーントーン)などが無いだけで、完成系として見る。
それを前に、美波は頭を切り替える。
私生活で何があろうと、仕事は仕事。直哉のせいにしたくはない。
「ん……」
騎乗位の挿絵があり、美波はそれを見つめた。
後ろ手に縛られ、体にも縄が回っている。勿論上手いが、何か物足りない。
美波は絵が苦手で、余程でないと上手く言葉にならなかった。
以前、主人公の服装が違っていた時がある。それなら、「ここはスーツです」と言えたが、今回はどうしてか分からない。
仕方なく、飯野にメールを送る。思った通り、“何か物足りなく感じる”と書き、カクテルや送ってもらったお礼などは書かなかった。
小説の画面に切り替えたが、思ったように進まない。
そんな時に書いても進まず、書いても結局直すことになる。
今日は諦め、美波は早めにベッドへ入った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
翌日の月刊Mの編集部では、編集者が忙しく作業をしている。
電話応対をしている者もいれば、パソコンに向かって小説の確認をしている者も。中には、徹夜をしてやっとソファーで仮眠を取っている者もいた。
「どうぞ、こちらへ」
桜子を案内してきた飯野が、隅のソファーセットを示す。