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官能小説家のリアル
第5章 関係
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
早く寝たが精神的に疲れていたせいで、美波が目を覚ましたのは10時。充分に寝たはずなのに、すっきりとしない。
明日は、直哉と指輪を買いに行く約束だった。彼が今晩から泊まり一緒に起きて、出掛けるはずだったのに。
それを考え、美波は涙が出そうになるのを堪えた。
泣いている場合じゃない。
さっさとシャワーを浴びて、仕事をしなければいけない。
それは分かっているのに、体が重かった。
何とか風呂へ行き頭からシャワーを浴びると、涙が出てしまった。
洗い流せばいい。
泣くのはここだけでと決め、思い切り泣いてから濡れた髪のままパソコンの前に座わる。
明日までに、飯野へネット用のコメントを送らなくてはいけない。
どうせ今日は予定も無くなった。それならと、美波は別原稿の仕上げを始めた。
何とか集中し、その世界へ入って行く。
幸せなカップルのラブシーンで終わり、メールに添付して担当へと送った。
枕元に置きっ放しだったスマホが鳴る。
もしかしてと思い急いで手にしたが、直哉ではなく、別雑誌の担当から。
頼まれたのは、半年後掲載の仕事。今の状況を考え、二ヶ月先にしてもらった。
急いでネット用のコメントを送ると、美波は髪を乾かす。
普段着のワンピースに着替え、外へ出た。
閉じこもっていると、直哉のことばかり考えてしまう。
観たい映画もある。ネットで買おうと思っていた本も。たまには書店へ行き、本を眺めるのもいい。
鍵を掛け、美波はエレベーターに乗った。
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目を覚ました直哉は、急いで支度をする。
ポロシャツにジーンズ。スニーカーを履くとマンションから駅へと走った。
美波に謝らなければいけない。そして、自分の想いをきちんと伝えたかった。
一緒にいたいと言ったのは、縛り付けるためではない。傍にいたいという意味だと。
もしも美波が他の男を選んだとしても、それだけは伝えたかった。
丁度来た電車に乗り、窓の外を眺める。