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官能小説家のリアル
第6章 アプローチ

「ん。たまにはいいかな。早めに上がって」
「そうそう。いい店あるの。最近見つけたんだけど……」
恵梨香は店の説明を始めたが、直哉には半分も入ってこなかった。
美波は普段アルコールを呑まない。そのせいで、去年のクリスマスは大変だった。
二人で美波のマンションでパーティーをしたが、呑めないのに珍しく呑み始めて。
でもその後ベッドでは大胆になり、朝まで愛し合った。
今年は、そんなクリスマスになるだろうか。
「ほーらっ。暗いって。じゃ、18時には上がろうね」
そう言うと、恵梨香は自分のデスクへ戻って行く。
恵梨香とは長い付き合いで、男友達のような関係。たまには呑みに行くのもいいだろう。
仕事を始めながら、直哉は半年近く仲間と呑みに行っていないことに自分で驚いていた。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
会社の最寄り駅近くの居酒屋で、直哉と恵梨香はジョッキを合わせた。
「カンパーイ」
恵梨香は何故か機嫌がいい。
直哉も、今日くらい美波のことを忘れて呑もうと思った。
明日は祝日。
美波には、土日、祝日も関係ない。以前祝日の昼頃行ったら、「会社は?」と言われて笑い合ったことがある。
「……なのよぉ。だから頭きちゃって。相良くん? 聞いてるー?」
「うん。聞いてるよ。総務の子だろう?」
「そうそう。24歳の子。主人に怒られますからーって。よく30歳の独身オバサンに言えるよねー?」
最初から恵梨香は、口も呑む方も飛ばし気味。
女性も30歳で独身だと、愚痴も増えるようだ。直哉はそれくらいにしか考えていなかった。
「相良くんは、結婚したいと思わないの?」
「あー。相手、次第かな……」
「恋人、いる、の? いた、の?」
そう訊かれると困ってしまう。
今は宙に浮いた状態。でも、美波は別れたつもりでいるかもしれない。
「ごめん。関係ないね、私には。相良くんて、凄くいい人じゃない?」
「そうかなあ」
「彼女のわがままとか、笑って聞いてあげちゃいそう。優しいもん」

