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官能小説家のリアル
第6章 アプローチ
酒癖は悪くないが、恵梨香は誰かと呑み歩くのが好きだった。それは直哉も聞いている。
でも仕事は真面目で、明るい人気者。一緒にいて、楽しいと思えた。
美波が外で呑まないせいもあり、直哉も久し振りの呑み屋街。
呑んで今日だけ悩みを忘れるのもいいと思った。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
『みなみ先生。お願いします』
桜子の頼みを聞き、美波は溜息をついた。
月刊M編集部の近くで呑むから、すぐ来て欲しい。そう言われても、美波には仕事が残っていた。
この前桃恵に連絡して、最後に一度イベントに出ようと話し合ったばかり。そのイベントで、ファンへの礼になることをしたいと。
桃恵は快く了承し、すぐ申し込みを済ませた。申込用紙は前回買ってあり、記入にも慣れている。
イベントには合否と言われる抽選があるが、詳しく書く職業欄にプロであることを明記すれば殆ど落ちることは無い。
桃恵は、毎回美波の名前を使って申し込む。主となる参加者が本人なら、それは問題なかった。
「イベントの準備もあるし……」
それは言い訳。
問題は、桜子が飯野も来ると言ったこと。
もう、プライベートで飯野と会いたくなかった。飯野には悪いが、今回で雑誌Mの仕事も辞めるつもりでいたのに。
『お願いします。仲を取り持ってください』
「え?」
桜子の言葉に耳を疑った。
『狙ってるんです。飯野さんを。恋人はいないって言ってたし』
もし桜子が飯野と付き合えば、自分は関係なくなる。
「どこ? 何ていうお店?」
『ありがとうございますー。えっと……』
店名と場所を聞き、美波は急いで支度をした。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
「相良くんは、どんな子がタイプなの?」
二件目は個室の居酒屋。
恵梨香は店をよく知っていて、直哉は着いて来ただけ。
ここでも恵梨香はよく呑む。もう何杯目かのジョッキのビールも、残り少ない。
「んー。可愛い子?」
「やっぱそうなんだぁ。男の人って、みんな見た目だよねぇ」
恵梨香が溜息をつく。
「違うよ。性格とか雰囲気が。結局は、長く付き合えるのって、性格だろう?」