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官能小説家のリアル
第6章 アプローチ
それを聞いた恵梨香が、納得して頷く。
「そうだよねー。イケメンとかお金持ちでいいなって思っても、最終的には性格だよねぇ」
二人で頷いた。
「私みたいに顔は可愛くなくても、少しだけ自信持ってもいいんだよね?」
そう言っているが、恵梨香は30歳なのに充分可愛い。美人と言った方がいいかもしれない。
「顔にも好みはあると思うけど、畑中さんは可愛いと思うよ。オレからしたらだけど」
「ありがとう」
恵梨香がクスリと笑う。
「じゃあ、性格は、相良くん好みじゃない……?」
直哉は、個室内の空気が少し変わったような気がした。
恵梨香とは、同僚として入社からの付き合い。ずっと同じ課で、会社では毎日何かしら話をする。
「私。相良くんが、好きだから……。何年も前から。でも、恋人が、出来たみたいだったから……」
恵梨香の言葉が、段々と弱くなって俯く。
直哉は、そんな彼女を初めて見た。
すぐ近くに自分を想っていた人がいたなんて。直哉は気付いていなかった。
恵梨香はいつも明るくて、男友達のよう。だからこうして、二人切りでも呑みに来た。
直哉は、何と返していいか分からない。
自分には今、恋人がいるのかさえも。美波を、恋人と言っていいのかどうかも。
「冗談……?」
恵梨香が、俯いたまま首を振る。
直哉は、そんな彼女を見つめた。