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官能小説家のリアル
第7章  溜息


「はい。傍に、いさせてください」
 今度は直哉から抱きしめ、キスを交わす。
 舌を絡め合っていた時、スマホが鳴った。
 誰かに見られていたような気になり、二人は慌てて離れる。
 作家によって、電話をしてもいい時間が違う。既婚者は昼間だったり、別に仕事をしている者は夜だったりと。美波は昼間寝ているから、夜を指定してあった。
 奥の部屋のスマホを取ると、“M飯野”という表示。
「飯野さんから……」
「出なよ」
 直哉に言われて出ると、彼はすぐ外部通話を押した。
「はい」
『今から、会えませんか? 以前のバーラウンジで』
「こんばんは。美波の恋人です」
 直哉が言うと、飯野は慌てる様子も無く『では、恋人もご一緒に』と言う。
『一時間後に、お待ちしています。では』
 それだけで通話は切れ、二人は顔を見合わせた。
「オレも一緒に? 何でだ?」
 美波も意味が分からず首を傾げる。
「行こう? でも、着替えた方がいいと思う。場所が場所だから」
「置いてったスーツとか、あったよな?」
 平日に泊ってしまった時そのまま会社へ行かれるように、美波がスーツ一式をプレゼントしたことがある。泊まる度に入れ替わるが、靴や靴下も揃っていた。
 直哉はそれに着替え、美波もワンピースを着る。
 一緒になど不思議に思いながらも、二人はタクシーを拾える通りへ向かった。


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