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官能小説家のリアル
第7章  溜息


「似ていたので、勘違いをしました。妻が、戻ってきたのかと……。僕は、みなみ先生ではなく、妻として見ていました。ですが、それは、間違いでした……」
 飯野が溜息をつく。
「送った時、相良さんを見て、恋人だろうと。そう分かった時、自分の間違いに気付きました。大切な人の、代わりはいないと……」
 飯野がグラスを空ける。
「本当に、申し訳ありませんでした。お二人で、ゆっくりしていってください。経費として持ちますので、後で領収証をお願いします。……失礼します」
 軽やかな動作で立ち上がると、飯野は店を出て行った。
 それを無言で見送ると、美波は直哉のスーツの袖を掴む。
「ごめん……」
 俯いた美波が泣いているのを見て、直哉は肩を抱く。
「オレだって、泣きたいよ。でも、一番泣きたいのは、飯野さんだよな……」
 お洒落なバーラウンジなら、仲の良すぎるカップルにしか見えない。
 二人は、暫くそのままでいた。


 ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆


 マンションへ戻った美波は、着替える前に箱からたくさんのビールを冷蔵庫へ移した。
「美波?」
 着替えながら、直哉が驚いている。
「今日は呑もう? 呑んで忘れよう? 飯野さんから聞いたこと、全部」
 そう言ってから、美波も部屋着に着替えた。
 冷えていたビールをテーブルに出すと、その分また箱から冷蔵庫へ入れる。
 直哉も、美波の言葉に賛成だった。
 何も知らない。何も聞いていない。本当にそうはならなくても、今夜だけは忘れたいと思った。
 つまみも出した美波が、缶のままビールを呑み始める。
「大丈夫か? 仕事は?」
「今年の分は終わったー」
「もう仕事納めー? まだ十一月なのに」
 缶を開けながら、直哉が羨ましそうに言う。
「直哉が来ない間、仕事するしかなかったから」
 美波が笑う。
「その代わり、二月からは忙しいよ。でも、普段からネタは考えちゃうけどね」
「あっ。ファクス貸して。紙とペンも」
 直哉はそこに“有休届け”を書き、スマホで確認した番号へ送った。
「いいの?」
「今日は呑むんだろう? 付き合うよ」
 空白の一ヶ月が、すぐに埋まっていく。


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