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官能小説家のリアル
第8章 変化
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
夜は早めに自分のマンションへ帰り、直哉はしっかりと体を休めた。
一つだけ美波に話さなかったことがある。それは、彼女を不安にさせたくないため。
男として自分できちんとする。そう決めた直哉は、“退社後に話したい”と恵梨香のデスクへ畳んだメモを置いた。
会社から少し離れた広い公園。一角には幼児用の遊び場があり、その反対側にはいくつかのベンチ。たまに恋人同士がいたりもする場所で、直哉は恵梨香を待っていた。
「相良くん。ごめん。遅くなって」
走って来た恵梨香が、息を整えながらベンチに座る。
「この前二人で呑んだ時、畑中さんは酔ってたよね?」
切り出した直哉に、恵梨香は何も答えずにいた。
「オレ、恋人とよりを戻した感じでさ……。お互いの思い込みと勘違いだっただけで、ホントは、なんにも壊れてなかったんだ」
直哉の話を聞いた恵梨香が笑い出す。
「そうだよ。あの日は、珍しく酔ってたから……。酔って、冗談言っただけだよ? やだなぁ、相良くん……」
恵梨香が無理に笑いながら言う。
「うん。冗談だよね。真に受けてごめん。畑中さん、いい人だからさ」
彼女に合わせ、直哉も少し笑いながら言った。
告白をされた後から、恵梨香とは少し不自然な関係のまま。それは自分のせいだと、直哉は反省している。
返事を保留にしたのは、美波が駄目だったら恵梨香へ、と思ってではない。美波のことがあって、上手く断る余裕が無かった。
直哉は、本当に恵梨香をいい人だと思っている。他の女子社員にも、何人かそんな子はいた。
それでも、美波とは何かが違う。
キスしたい。自分だけのものになって欲しい。会えない間も、そう思ったのは美波だけだった。美波に嫌われたと感じていても。
「今日は、呑みにって気分じゃないから。帰るね。また明日」
「うん」
恵梨香が公園を出る姿を見届けてから、直哉はベンチから立ち上がった。
◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆ ◆◇◆
美波のマンションへ行き、一緒にコンビニ弁当を食べる。
一ヶ月の時が空いたのに、二人には何もなかったようだった。