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官能小説家のリアル
第8章 変化
テレビを観て笑う直哉の横顔に、美波は幸せを感じる。
一緒にいる。という意味。それは気持ちが寄り添うこと。二人でいる間、ずっと会話が必要なのとは違う。離れていても構わない。美波は改めて実感していた。
「美波。今度の休み、ネックレス買いに行こうよ」
「うん」
簡単な会話。それだけで、直哉はまたテレビへ目を遣る。
直哉も思っていた。
一緒に住みたいと言うようになったのは、好きで不安になったから。傍に置いておきたい。それは自分のエゴ。そんなことをしなくても、美波はいなくなったりしない。今は心からそう感じた。
「早くからメシ喰って、ネックレス買って、その後ブラブラして。美波の手料理も食べてみたいなあ」
「早起きと料理は無理……」
美波が申し訳なさそうに笑う。
「だよな。その前の晩から泊まるし。疲れて、外出も無理だったりして」
直哉が笑うのを、美波が顔を紅くして見る。
「メシはオレが作ってやるから。簡単にものだけどな」
美波も、直哉がたまに自炊をしているのは知っていた。でも恋人に夕食を作ってもらう女性など、自分でも情けないとは思っている。
「早起きと、家事が苦手。後、数字も。それに外出」
言い当てられ、美波は溜息をつく。
「もっと他にもあるかもなあ。オレ、美波のこともっと知りたいから。いいとこもたくさん知ってるけど、ダメなとこも。全部まとめて好きだから」
「私のいい所って……?」
美波は、直哉にどう思われているのか知りたかった。
「そうだなあ……。仕事を凄く頑張るとこ。性格も顔も可愛いとこ。小説が書けること」
“小説を書く”など美波には普通のことで、長所に挙げられるとは考えてもいない。
「後、フェラがうま……」
最後まで言わせず、直哉にクッションをぶつけた。
「何だよお。褒めてるのに」
「それはいいから……」
「あっ。イベントっていつ?」
急に話題を変えた直哉に、美波は首を傾げる。
「冬のは、年末だったよなあ? 去年」
「うん。今年は、大晦日」
大掃除もおせち作りもしない美波には関係無いが、日程のせいで出られない作家も多い。