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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち

「佐伯さん、夏樹がすいません。大丈夫ですか?」

頬は赤くはれ、口の端からは血がにじみ出ていて痛々しい。
ポケットからハンカチを取り出して血を拭こうとすると、顔を歪めて痛そうにしていた。

「大丈夫ですよ、このくらい」

「でもっ!夏樹の勘違いでケガまでさせてしまって」

「本当に大丈夫ですから。それに、こんな時間に好きな女性が知らない男と……昔好きだった男といると勘違いすれば私だって殴ってたと思いますよ。彼みたいに威力はないですけどね」

佐伯さんは私にウィンクをし、ズボンについた砂を振り払いながら立ち上がった。
それに合わせて立ち上がっても、夏樹はいまだに頭を抱えて立ちあがる素振りを見せない。

「夏樹、勘違いさせてごめんね。佐伯さんが店内の絵を見て本物が見たいって言うから連れてきたの。この4日間島中を見て回ってくれてね、この島のことを色々と知ってリゾート開発に活かしたいって言ってくれてるの。前の担当とはえらい違いだよ」

佐伯さんが何者かを分かってほしくてリゾート開発の事を話した。


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