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ひと夏の恋……そして……
第16章 すれ違う気持ち

「降りてこられるか?」

「うん、すぐに行く!待ってて」

急いで下に降りて夏樹の顔を見れば、うれしさのあまり夏樹に抱きついていた。

「おかえり!さっきはびっくりしたよ。明日帰ってくるんじゃなかったの?いつ帰ってきたの?」

「真緒に会いたくて仕方がなかったから一人だけ早く帰ってきたんだ」

矢継ぎ早にする質問に、うれしい答えを返してくれる。

「そうなんだ、うれしい!でも抜けてきてよかったの?久しぶりに会った友達だったんでしょ?もっとゆっくりしてくればよかったのに」

予定を切り上げて会いに来てくれたのはうれしい。
だけど、あんなにも楽しみにしていた予定を切り上げさせてしまって申し訳なくも思う。
次は私も一緒に行って、友達を紹介してほしいと考えてしまう。

「そっか……ゆっくりしてきてよかったんだ」

「そうだよ。久しぶりに会ったんでしょ?もっとゆっくりしてくればよかったんだよ」

過去の呪縛から解き放たれた喜びと、予期せず会えた夏樹に心が浮足立ち、夏樹の言葉の真意に気が付かなかった。


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