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没落お嬢さま
第26章 第二十五夜
第二十五夜
いずみの一言は、思惑以上に、亮生の心をうまく捉えてくれたようである。
そのせいか、次の日の亮生も、ハイテンションのままであり、まるで吐精した翌日みたいだったのだ。
彼は、部屋に夜食を持ってきたいずみの姿を、ニヤニヤしながら、眺め続けていたのだった。
でも、これはこれで、何となく気持ち悪い感じもするのである。
「ねえ、君」
と、浮き浮きしている亮生が、夜食を机に置き終えたばかりのいずみに、ようやく話し掛けてきた。
「何でしょう?」
いずみは、落ち着いて、言葉を返した。
「うふふ。いずみくん。いずみちゃん。いずみぃ」
亮生は、嬉しそうに、いずみの名を呼び続けた。
「あのう。ご用でしょうか?」
いずみは、内心では呆れつつも、静かに、もう一度、尋ねた。
「今日の君も美しいね」
亮生は、満面の笑みで、やっと、そう告げたのだった。
「あ、ありがとうございます」
困惑した表情で、いずみは礼を言った。
「君と一緒に居られて、僕は幸せだよ」
「そ、そうですか。こちらこそ、そう言っていただければ、光栄です」
すると、亮生が、急に机から離れて、いずみのそばに歩み寄ったのである。
それから、おもむろに、自分の体をいずみにと擦り寄せたのだ。
いずみは、ゾクッとしたが、表情には出さず、亮生のするがままに任せた。