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没落お嬢さま
第28章 第二十七夜
第二十七夜
翌日の昼間、いずみが亮生の部屋の掃除に入ってみると、例のツボは、何事もなかったように、棚の上にと飾られていた。
やっぱり、目立つほどの破損はしていなかったようなのである。
一方のツボが収まっていた木箱は、昨夜の状態のままで放置されており、いずみが片付けて、ゴミとして捨てる事になったのだった。
しかし、おかしな事に、木箱はあるのに、それを梱包していた荒縄は見つからなかったのだ。
ついに、掃除が終わるまで、部屋のどこからも荒縄は出てこなかったのであった。
その晩、いずみが亮生の部屋に夜食を届けにいくと、机に座った亮生はやけに陽気そうな笑顔を浮かべていた。
「君。いいかな?今日もお願いがあるんだ」
と、いずみが夜食をセットし終えるのを待ち構えて、亮生はいずみに話を持ち掛けてきた。
いずみは、不安げな表情を見せたのだった。
亮生は、ごそごそと自分の机の引き出しの中を漁りだした。
そして、取り出してみせたのが、予感どおり、あの荒縄だったのである。
彼は、この荒縄だけ、捨てられないように、大事に保管していたのだ。
「ねえ。今日も、君のことを縛らせてくれないかな」
亮生は、ケロッとした態度で、そんな事を言ったのだった。