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没落お嬢さま
第34章 第三十三夜
第三十三夜
翌日、亮生は、何事もなかったように、屋敷に戻ってきた。
いずみが彼の変化に気が付いたのは、夜、いつものように、彼の部屋に夜食を運んだ時だった。
部屋で、机に座っていた亮生は、明らかに元気がなかったのである。
いずみが部屋に入ってきても、彼は振り向こうともしかった。
確か、ディナーの時は、こんな落ち込んだ素ぶりは見せていなかったのだが、どうも、その時は、わざと平静に振る舞っていたらしい。
周囲の反応をひどく気にする亮生の事なので、ディナーの間は、本心を他人に見せられず、一人になった今、どうやら、隠していた感情が全て噴出していたらしかった。
彼にとっては、いずみは、そんな自分の内面を見られても、全然構わない、ちっぽけな存在だった訳だ。
そんな風に考えると、いずみも微妙な気持ちになっていたであろうが、それでも、彼女は、自分の任務だけでも、きちんと全うしようとしたのだった。