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没落お嬢さま
第34章 第三十三夜
「ご主人さま。夜食を置かせていただきます」

と、いずみは静かに告げた。

「君。今日は、夜食はいらないよ」

机の前にうなだれていた亮生が、いきなり、そう言葉を返したのだった。
いずみの方は、いっさい、見ようとしない状態でだ。

「でも・・・」

「いいんだ。どうせ、食べる気にならないんだから。
そのまま持ち帰ってくれ」

どうやら、亮生の心の沈み具合は相当なものみたいなのだった。
それを先ほどまでは人前で出さないようにしていた訳なのだから、その辛さは、今となって、さらに増幅していたのかもしれない。

「では、私は?」

いずみは、恐る恐る、尋ねてみた。

「君も、もういい。
すぐ下がってくれ」

あっさり亮生の許可が出たので、いずみは少し安堵したのだった。

しかし、彼女に対しても、ここまで無関心とは、今の亮生は、やはり、かなり異常なのである。
それが昨日の外泊と関係しているのは、まず間違いなさそうなのだった。
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