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没落お嬢さま
第37章 第三十六夜

  第三十六夜

外泊した日のあとから、亮生の元気が無くなっていた事に気付いていたのは、別にいずみだけではなかった。
亮生の母も、その事はうっすらと感じ取っていたのだ。
さすがは、深い愛情で繋がった親子なのである。

亮生は、心配をかけまいと、母の前では、何とか気丈な態度を取り続けていたはずなのだが、それでも、母にだけは、微妙な心の弱り具合を見抜かれていたのだ。

それが、今日から、亮生の様子が急に元気になりだしていた。
もちろん、亮生の母も、彼の立ち直りをいち早く察知していたのだが、彼の裏には、いずみがいた事までは、十分に分かってはいなかったのである。

そして、夜になると、亮生にとっては楽しみな、自分だけの時間が、また訪れたのだ。

彼の部屋には、これまで通りに、夜食を持ったいずみが現れたのだった。

例によって、セックスをした翌日は、亮生はたいへん機嫌が良さそうなのである。
いずみが、まだ机の上に夜食を並べている最中だと言うのに、浮き浮きした亮生は、いきなり、いずみの手を掴んだ。

「いけませんよ。今日は、セックスはできません。
それは、ご主人さまもご存知でしょう?」

いずみは、優しく、亮生を制したのだった。

「でも・・・」

と、亮生は諦めたくなさそうだった。

すると、夜食を全て置き終えたばかりのいずみは、すかさず、亮生の口に自分の唇を当てたのである。

いちおう、舌も使ったディープキスだった。
いずみは、まずはキスをして、亮生の高ぶる感情を和らげたのだ。

二人の口を離した時、亮生も、けっこう嬉しそうな表情になっていた。
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