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没落お嬢さま
第38章 第三十七夜

  第三十七夜

次の日も、亮生は、いずみへと熱心に例のマッサージを催促したのだった。
いずみの方は、やや困り果てた感じなのである。

「ご主人さま。楽しみ方は一つだけではございません。
今日は違う事をなさいませんか?」

いずみがそんな事を言ったものだから、亮生はちょっと不愉快になったのだった。

「なんだよ。僕の体を触りたくないのかよ」

「そうじゃありません。
別の事をしましょう、と言っているのです」

「何をするんだ?」

「例えば、こんな事です」

いずみはそう言うなり、亮生の夜食のティーカップを持ち上げた。
それを、彼女は亮生には渡さず、自分で口をつけてしまったのである。

亮生は、その様子をキョトンとして見ていた。

ティーカップの中身を半分ほど口に含んだいずみは、顔を頬張らせている。
まだ口に入れた飲み物を喉まで通していないようなのだ。

彼女の目は、可笑しそうに、キラキラ光っているのである。

そのまま彼女は、まっすぐに亮生の唇にとキスしたのだった。
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