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没落お嬢さま
第38章 第三十七夜
いずみの口の中の飲み物が、緩やかに亮生の口腔へと流れ込んできた。
呆気にとられた亮生は、されるがままになっていた。

ようやく、いずみが亮生の口から自分の顔を離したのである。

「今日のお夜食は、このような形で召し上がるのはいかかでしょうか」

彼女は、得意げに、そう提案したのだった。
要するに、いずみは口移しをしてくれたのである。

それは、亮生にとっても、これまでとは違うキスの感触だった。
ひどく興味深くて、戸惑いつつも、亮生は頷いたのである。

いずみもニッコリと微笑む。

こうして今日は、口移しを真似たキスを楽しむ事になったのだ。

いずみは、飲み物ばかりではなく、菓子も口移しで食べさせてくれた。
口と口の間で食べ物を移動させる最中も、互いの舌を絡め合わせたのである。

二人の口の中はまさに一つになり、不思議な感覚を味わえたのだ。

「待って。僕も食べさせてあげるよ」

と、亮生も言い出した。

「ありがとうございます」

いずみも、明るく礼を言った。

今度は、亮生が、自分の口に入れたものを、いずみの口の中へと渡したのだった。

このように何度も口づけし合う事で、あっという間に夜食は食べ終わってしまったのである。
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