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没落お嬢さま
第41章 第四十夜
第四十夜
次の日、いずみは、18日ぶりの丸一日の休暇をとった。
その時間を利用して、昼間は町の方へ買い物に出たみたいなのである。
しかし、夕方になって屋敷に戻ってくると、彼女は、休みだったにも関わらず、亮生への夜食運びだけは、自ら進んで、引き受けたのだった。
他の使用人たちも自分たちの担当の仕事が忙しかったので、いずみが自分の受け持ちの仕事を片付けてくれると言うのであれば、あえて反対もしなかったのである。
そんな訳で、この日も、亮生の部屋には、いずみが夜食を届けたのだ。
ただし、今日のいずみは、普段と様子が違った。夜食以外に、謎の小箱も抱えていたのだ。
何やら、ケーキでも入っていそうな、20センチ四方ぐらいの紙の箱なのである。
当然、その箱の存在には、亮生もすぐ気が付いたのだった。
「何だい、その箱は?」
亮生は、夜食を机に並べ終えたいずみに、すかさず尋ねた。
「昨日はご主人さまのご希望に沿う事ができませんでしたので、今日はお詫びの品を持ってきました」
と、いずみは、落ち着いた様子で答えた。
「おや、そうなのかい」
「加えて、遅れてしまいましたが、ご主人さまへの私個人からの誕生日プレゼントでございます」
今さら誕生日のプレゼントを用意してくれるとは、いずみの妙な律儀ぶりに、亮生は少し怪しく思ったのだった。