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没落お嬢さま
第45章 第四十四夜
しかし、彼はいずみを許してやった訳ではなかった。

今度は、目くじらを立てたまま、手を握りしめると、その拳でいずみの体を無造作に殴りだしたのだ。
本気で怒っているらしく、拳にもだいぶ力が込められていたのである。

「うっ、うっ」

拳が一発、体に当たるたびに、いずみは体を揺らし、鈍く呻いた。

しかも、拳で叩かれた体の部位は、順に、皮膚が赤く変色していったのである。
形のいい乳房も、脇腹も、腹筋もだ。

怒り心頭に発していた亮生にとっては、そんな事は眼中になかったのかもしれないが、女の子に対して、なかなかの酷い仕打ちをしているのである。

亮生がようやく殴るのをやめた時、いずみは、とうとう、グズグズと本格的に泣き始めてしまったのだった。

それを見て、亮生も、やっと我に返ったのだ。

目の前にいるいずみの体は、ムゴい有様になっていた。
彼女の白かった肌は、あちこちが腫れてしまい、すっかり紅白のまだらになっていたのである。

さすがに、亮生もやや怯んだようだが、ここで、急に優しい態度をとれば、自分の威厳が保てないし、彼は動揺しつつも、いずみの様子を見守ったのだった。
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