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没落お嬢さま
第46章 第四十五夜
第四十五夜
翌日、いずみは、また休みをとって、昼間は病院へと赴いていた。
それも、知人にバレないように、電車に乗って、屋敷からだいぶ離れた病院にまで足を運んだのである。
診察を終えた後のいずみは、妙に暗く沈んでいたように見えた。
帰りも、彼女は電車に乗ったのだが、もう時刻は夕方になっていたのだった。
そして、そんな時間だったのが良くなかったようなのだ。
仕事帰りの人々でごった返していた車中では座れる席もなくて、落ち込んで、車内の通路に立っていたいずみだが、突然、お尻に人の手の感触を覚えた。
最初は、いずみも、たまたま、誰かの手が当たっただけかと思ったのが、どうも違うみたいなのである。
その手は、執拗に、いずみの腰部を、スカート越しに触り続けたのだ。
これは、恐らくは、痴漢と言うヤツらしいのである。
いずみもギョッとして、体が固まってしまったのだった。
電車など、まるで乗った事のなかったいずみにしてみれば、初めての経験なのである。
まさか、電車を使い始めたばかりで、いきなり痴漢に遭遇してしまうとは。