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第46章 第四十五夜

「ご、ごめんなさい。
ほんの出来心だったんです。どうか怒らないでください」

おどおどしながら、男の一人が慌てて謝った。

「何を今さら！
この私に、こんな事をして、許されると思ってるの？
私のパトロンは、とっても怖いんだからね！
どんな事をしても、もう、絶対に逃げられやしないわよ。
きっと、あなたたちは全員、海に沈められるわ。
死体は、多分、永久に見つからないでしょうね」

いずみの強烈なハッタリに、男たちは青ざめてしまい、本気で信じ込んでしまったようなのだった。

何よりも、この男たちの正体は、実際は、ちょっとイキがっていただけの近所のチンピラだったのだ。
よって、本物の極道と関わりあうのは心底怖かったようなのであり、こんな事を言われてしまうと、それだけで、ビビって、まるで疑わなかったみたいなのである。

もっとも、いずみのお尻にあった刺青は、全くのニセモノだった。
きちんと肉に彫り刻んだものではなく、皮膚の上っ面に刷り込んだだけのダミーだったのだ。
しかし、この廃屋の中が暗かったものだから、連中には、そのへんの真偽が十分に見分けられなかったようなのである。

全ては、いずみにと、都合よく味方してくれたみたいなのだった。