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没落お嬢さま
第2章 第一夜
第一夜
亮生は、夜の9時から11時にかけては、自分の部屋に閉じこもり、勉学に勤しむ事を日課としていた。
9時になって、彼が部屋の中に入ると、まずは使用人が夜食と飲み物を持ってきてくれるのだ。
その日も時間が来て、亮生が自分の部屋で机に向かっていると、いつも通りに部屋のドアをノックする音が聞こえてきたのだった。
彼が許可すると、使用人は中へと入ってくる。
机の方に顔を向けていた亮生は、はじめ気が付かなかったのだが、今夜、夜食を持ってきてくれたのは、いずみであった。
彼女が、無愛想に、机の上に食器類を置き始めた時に、亮生も、ようやく、その事に気付いたのである。
任務をたんたんと遂行する彼女は、全くの無表情であった。
以前の、爽やかなお嬢さまだった頃の彼女とは、まるで印象が違うのである。
これには、亮生もやや躊躇した。
「あ、ありがとう」
と、亮生は、いずみに声を掛けてみた。
やはり、ムスッとしたいずみは、何も答えようとはしないのである。
困った亮生も、そのまま黙り込んだ。
そして、いずみは全ての食器類を机の上に並べ終えたのだが、彼女はすぐに引き下がったりはせず、お盆を抱えて、その場に立ち続けていたのである。
亮生も、ひどく弱ってしまったのだった。