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没落お嬢さま
第47章 第四十六夜
「ご主人さま」

と、亮生の体を歓ばしながら、突然、いずみの方から話し掛けてきた。

「な、何だい」

ぼんやりとした頭で、亮生が答えた。

「私、本当の事を、お話いたしますね」

「本当の事?」

「そう。本当の事です」

「本当って?」

「私、この屋敷に来たばかりの頃は、毎日が、とても辛くて、辛くて、仕方がなかったのです。
父も母も、私だけを置き去りにして、いなくなってしまうし、その事を悲しむ間も無いうちに、住み慣れた住宅や満たされた生活からも追い出されちゃうし。
なぜ、私ばかりが、こんな目に合わなくちゃいけないのだろう、と思いました。
あなたのご両親は、私の事を、ご厚意で雇ってくださったのかもしれませんが、実際は、私にとっては、最大級の屈辱以外の何ものでもなかったのですよ。
今まで、私が使用人にやらせていた事を、今度は、私がやらなくちゃいけないんですもの。
特に、あなたの部屋に夜食を運ぶのは、地獄のような苦痛でした。
だって、あなたは、私が部屋へ行くたびに、無理難題を強いてきたでしょう?
そうやって、私の心は、どんどん砕けて、ガラスのように壊れていったんです。
この部屋から退室した後は、私は、悔しくて、いつも自分の部屋で朝まで泣いていました。
ご存知でしたか?」

「そ、そうだったのかい」
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