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没落お嬢さま
第12章 第十一夜
第十一夜
「亮生さん」
と、亮生の事を、彼の母が呼んだ。
それは、その日のディナーが終わったばかりの時分の事であった。
「なあに、ママ」
と、亮生は母に答えた。
「あなた。最近、夜食をいずみさんに部屋まで運ばせてるそうね」
「はい」
「聞く話によると、あなたの部屋に入ったいずみさんが、戻ってくるのが遅いらしいのですが」
「それはですね。
僕は、時々、いずみさんと勉強の教え合いをしているからなのです」
「学校のお勉強?」
「はい」
「ああ、そうか。
いずみさんも、こんな不幸な事にならなければ、退学などされずに、今でも学校に通ってたんですもね。
亮生さん。あなたは、まことに、優しく育ってくれましたね。
あなたと一緒に勉強する事で、学校に行く気分を味わえたら、少しはいずみさんの慰みにもなるかもしれません。
本当に良い事です。
亮生さん。いずみさんの事を頼みましたよ」
「分かりました。ママ」
二人の会話は、こうして何もなく終わったのだった。