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没落お嬢さま
第17章 第十六夜
「ご主人さま。ご用は何でしょうか」

警戒気味のいずみが、丁寧に、亮生に尋ねてみた。

「君。そんな固くならなくてもいいよ。
今日は、特別な日なんだ。君も、もっと楽にしたまえ」

亮生が、浮かれた感じで告げた。

「はい。お気遣い、ありがとうございます」

「君。今日が何の日かは分かっているね?」

「ご主人さまのお誕生日です」

「そうだ。
僕はね、何よりも、君からのプレゼントを楽しみにしていたんだよ。
この時間が来るのを、ずっと期待して待っていたんだ」

いずみは不安そうな顔になった。
使用人一同のプレゼントこそ、亮生には渡してはいたが、いずみ個人としては、亮生へのプレゼントなどは用意していなかったのだ。

「申し訳ありません。
私、ご主人さまへのプレゼントは準備できていませんでした」

「まあまあ。気にするな。
そんなものは、最初からアテにはしてなかったよ。
むしろ、僕の方から、君に素敵なプレゼントをあげようと思ってね」

「え?」

いずみは、きょとんとした。
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