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没落お嬢さま
第3章 第二夜
これまで椅子に座っていた亮生が、勢いよく立ち上がった。
そして、彼は、ぐいっと、いずみの前に詰め寄ったのだ。

驚いたいずみは、目を見開いて、立ちすくんでいた。
その体は、相変わらず、大きく震えているのだ。

「いいかい。
君の事なんて、すぐにクビにだって出来るんだ。
それを、昔のよしみで、情けをかけて、ここに置いてやってるだけなんだよ。
その事をきちんと理解しているのかい?」

「分かってるわ。
だから、昨日の態度は無礼だったって、謝っているのに」

「いいや。分かってないね。
また、タメ口になってるじゃないか」

「ごめんなさい」

「申し訳ありません、だ」

「も、申し訳ありません」

「いい加減、お嬢さまだった頃のプライドは捨てろよ。
今の君は、もう、ただの下級労働者なんだ。
それも、居場所のないノラ猫よりも、もっとタチが悪い。
これまで、まともな仕事もした事がなくて、ほんとに何も出来ないんだからね。
それを、うちの家で、気の毒に思ったからこそ、恩恵で雇ってあげてるんだ。
あんまり聞き分けが無いようだったら、今すぐ、君をここから追い出してもいいんだぜ。
でも、外の世界に出されたら、君はどうやって生きてゆく?
屋敷の外には、怖い人間がいっぱい居るんだ。
君みたいな温室育ちの世間知らずは、たちまち、そいつらの食い物にされてしまうぞ」

亮生は、厳しく説教し続けた。
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