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没落お嬢さま
第20章 第十九夜
第十九夜
次の日の晩、いずみが、亮生のもとへ夜食を届けようとすると、急に亮生の母に呼び止められた。
「いずみさん。ちょっと、いいかしら。
亮生なんだけど、今日は、妙に疲れたような感じなのよ。
誕生日を豪勢に祝ったあとですし、今ごろ、疲労が出てきたんでしょうかね。
今夜は、栄養剤も一緒に持っていって下さらないかしら。お願いしますね」
正直なところ、いずみは気が進まなかったのだが、亮生の母の指図ならば、言われた通りにするしかないのである。
いずみは、夜食の盆の上に、栄養剤の小ビンを一つ、加えたのだった。
見た目は100mlサイズのありふれた栄養剤だが、中身はブルジョア向けの効果抜群の高級品なのだ。
そのあと、いずみは、亮生の了解を得て、彼の部屋へと入室した。
中で、机に座っていた亮生は、確かに、ひどく、やつれた雰囲気なのである。
その本当の理由は、いずみだけが、きちんと分かっているのだ。
彼女は、いつものように、夜食を亮生の机の上に置き始めたのだった。
彼女としては、できれば、亮生を刺激しないようにしたかった瞬間なのである。
だが、夜食に栄養剤も混じっていた事に気が付いた途端、案の定、亮生は急に激昂したのだった。