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罪人の島
第1章 序章
子供の虐待が後を絶たない。
いったい、何で弱いもの虐めをするのだろう?
児童相談所に勤める美奈子は思う。
誰かが気が付いて、施設で保護できた子は、まだ良いけれど、親による虐待が疑わしくても助けられない子供がいるのが不憫でならない。
幼馴染で看護師の絵里と飲みに行くと、必ずその話になった。

「あり得ないでしょ? 絶対クロなのにね、どっからかストップが入って、家庭訪問にも行けなくなるのよ」
「だって、子供には、傷があったんでしょう?」
「そうよ。身体検査で見つかったんだもの。それでも、その親っていうのが有力者の息子かなんか知らないけど、醜聞になるから、うちの息子の近所をうろつくなって、役所の方に言って来たんだって」
「醜聞って、醜いのは、そっちじゃんって言いたいよね?」
「ほんっと、そう! 心配でさぁ、ここんとこ、夜眠れないの」
「それじゃあ美奈子が病気になっちゃうよ。ねぇ、ウチの先生のところにおいでよ。心療内科もやってるから、お薬出してくれるよ」
「うん。そうする。話も聞いてくれるのかなぁ」
「もちろん聞いてくれるよ。それ、いつがいい?」
「いつでも」
「じゃあ、早い方がいいから、明日の朝おいでよ。予約取っとく」
「うん、わかった。ありがとう」

こうして、美奈子は絵里の勤める病院に出掛けることになった。
この時は、まだ自分だけの悩みとして抱えていたので、それが状況を変えられるきっかけになるとは想像もしていなかった。


翌朝、美奈子は、約束通り絵里の勤務先の景山病院へ出掛けた。
完全予約制で、待たされることもなく院長の診察が受けられた。

「眠れないんですって?」
「そうなんです。いろいろ考えちゃって……」

美奈子は、昨夜、お酒の席で絵里に話をしたのと同じ内容のことを、医師に話した。

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