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罪人の島
第4章 飼育
 食事の時、例の猫の女王のようなコスチュームを着た女性の医師と一緒になった。

「こんにちは」

 美奈子と絵里は、隣のテーブルに座っている女医に声を掛けた。
 女医は、チラとこちらを見た後、顔を正面に戻してから、「こんにちは」と言った。
 決して冷たい声ではなかったが、心ここに在らずという感じのする声だった。

「おい、麗子。調子はどう?」

 景山が親しげに声を掛けたので、美奈子と絵里は、少なからず驚いた、

「まぁまぁっていう感じだと思うわ」
「何だ。自信なさげだなぁ」
「やっぱり、私、ここに住むわ」
「いやいや、お前がここに入ったら抜け出せなくなるぞ」
「ここで別人を演じながら生きる方が楽なのよ」
「じゃあ、お前でなければ救えない患者は、もういいのか?」
「ここに連れて来てくれればいいのよ」
「それは、無理だろう」
「とにかく、私は戻らないわよ」
「わかったよ。後でまた、ゆっくり話そう」
「いいけど。ところで、なんで自分だけナース連れてんの?」
「いや、一人はナースじゃなくて助手なんだ」
「じゃあ、助手の子でいいわ、一人回してよ」
「待てって。必要なら本土から連れて来るから」
「だって、今日の午後から訓練をしたいのよ」
「来週って言ってたろう?」
「来週、VIPが来るんだってさ。私が招待したんだもの。使える子、いた方がいいじゃない」
「あの……」

 美奈子は、自分がYesと言えば収まるのだと思った。

「何だい? 美奈子さん」
「私、手伝います! この週末だけですけど、それでも良かったら手伝わせてください」
「いやいや、ちょっと待ってくれ。話が余計にややこしくなるだけだから」
「いいじゃん。彼女、やってくれるって言ってるんだから」
「いや、それは、何を手伝うのかさえ分かってないで言ってるんだよ」
「ふふふふ……。睦郎のお気に入りなの?」
「違うよ。だが、とにかく困る」
「あなた美奈子って言うの? 私は、麗子。よろしくね」

 麗子は、顔の半分から上は、シリコンのような素材の猫耳の付いた帽子を被っているが、ニッコリしたのは口元で分かった。
 景山は、「参ったな」と言いながら、頭を抱えていたが、麗子は、美奈子を誘うと、すっと立ち上がった。

「睦郎、悪いけど頂いて行くわよ」
「睦郎さん、私は、大丈夫です。大人ですから」

 こうなると、もう止めようもなかった。
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