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呟き…
第11章 夫の協力…
「何がおかしい?」
不機嫌を露わにして悠真から顔を背けて歩いてやる。
「いや、実際のとこ、芹沢に関する文献って少ないんや。芹沢 鴨って名前も本名かどうかすらわかってない。」
「そうなんか?」
「だから芹沢が悪役じゃない小説とか既にあるぞ。」
私が今更、芹沢さんを主役にしなくとも、芹沢さん主役の話がこの世には存在する。
そうやって悠真は私にアームストロング砲を撃ち込んで来る。
「世間知らずの時代遅れで悪うございました。」
そう居直るしかない。
その日は夕食を京都で済ませて大阪へ帰る。
うちに帰れば京都で買うた生八つ橋をデザートにして悠真とコーヒーを飲む。
「そんで、わざわざ京都まで出かけて小説のネタくらいは浮かんだんか?」
いきなりそんな事を悠真に聞かれて八つ橋が喉に詰まる。
「小説のネタ…?」
「時代劇ものが書きたいとか言ってなかったか?それとも芹沢の主役は二番煎じになるからって諦めたんか?」
「いや…、そういう訳やないけど…。」
ネコのネタを全く感じなかった京都遊び…。
結果として私の頭の中じゃ、筋肉ムキムキで鉄扇を振り回す藤原 清太郎が豪快な高笑いをしてる。
「えーっと…、もっかい京都に行こか?」
引き攣った笑いで誤魔化せば
「新型ウィルス騒ぎが終息するまで出かけない。まだ新撰組が必要ならドラマでも見とけ。」
と悠真が冷たく言う。
「別に新撰組が書きたい訳じゃないし…。」
「ならスランプか?」
「スランプとも違うかな?」
「つか…、お前…、何が書きたいの?」
「とりあえずBL…。」
「腐女子かよ…。」
さすがに冷たい視線を浴びると笑えない。
「なんかイメージ湧きそうなのってないかな…。」
そう呟いた自分に後悔する。
一週間後…。
我が家のテレビスクリーンでは悠真が用意した大量のBL版エロアニメやらエロドラマが上映される事となる。
「観てて、その気になったらエッチしような。」
ガンプラを無視してご機嫌になる夫の言葉に鳥肌が立つ。
こんな風にやたらと協力的な夫が居てもイメージが湧かずにネコの話は進まない。
まあ、そのうちに書けるだろうと高を括るしかなかった。