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呟き…
第12章 大ちゃん…



「あんた…、パスポートを貰いに行けへんって事は娘の結婚式に出えへんという意味やな?もし、それが本気や言うんやったら悪いけど離婚するわ。」


たかがパスポートで嫁から三行半を突き付けられた大ちゃん…。

2週間後は無言のままパスポートを取りに行く。

パスポートを無事に貰えた後の大ちゃんはやたらとご機嫌になる。

わざわざ会社中の従業員を行き付けの寿司屋に呼び出してはパスポートを見せびらかす。


「見ろや。これが俺のパスポートや。これで俺は世界中に行けるんや。」

「社長、おめでとうございます。」


元ぼーそーぞくという従業員ばかりで構成される会社のノリはそんな感じ…。

パスポート自慢をするお父さんに呆れた顔をするのは家族だけ…。

悠真の母である奈美おばちゃんですら


「やったな。大ちゃん。ハワイの次は今流行りの豪華客船って奴に乗りに行こや。」


とハワイを飛ばして次の旅行の話をする。

おばちゃんも元ぼーそーぞくやもんな。


「豪華客船って、大阪湾から大分に行くやつか?」


それはただのフェリーです。


「ちゃうちゃう。横浜から出て3日間くらいで長崎とか沖縄辺りを回るでっかい船や。ご飯とか食べ放題でお酒も飲み放題らしいで…。」


それはパスポートの必要がありません。


「お母さん、豪華客船やて?行きたいか?」


とにかくご機嫌の大ちゃんがお母さんと旅行したいと騒ぎ出す。


「ハワイが無事に終わったらな。」


お母さんが穏やかな顔で笑ってる。

何はともあれパスポートを手に入れた。

今はそれだけで充分だとお母さんが言う。

娘の結婚式にはお金を出さないお父さんだけどお母さんとの旅行なら豪華客船だろうとなんだろうとケチらない主義だ。

これが我が家の平和を守る秘訣かと笑ってご機嫌なお父さんとパスポート取得祝いをするだけだった。


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