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呟き…
第1章 働けよ…
「腹は立たんのか?」
余裕の顔をする悠真が不思議で堪らない。
「いちいち腹立ててたらキリがない。そういう世界やから、そういう奴は山ほど居る。」
だから悠真は切り捨てる。
会社の上司として広末さんを切り捨てる事が出来なかった私を悠真が叱る。
「そろそろ、その人見知りを治せよ。」
こういう時は悠真の方が私よりも大人になる。
「だって…。」
「その子は事務で来夢は現場やろ?事務のオバチャンが怖いって来夢もよく言うてるやんけ。その程度の事でカリカリしてたら損やぞ。それに、そういう子に常識とか求めるだけ無駄やしな。」
「大弥君でも出来るのに…。」
「大弥や柑奈がそういう大人にならんように俺らがちゃんとしてたらええねん。」
悠真のそういう考え方は好きだと思う。
この人に子供が出来たら、その子供の自慢になれる父親になろうと努力する人だと思うから…。
あれだけ広末さんにイライラとしてた自分が馬鹿みたいに思えて来た。
「充電出来たから帰るぞ。大弥がゲームをやりたがってる。」
停電が終わるまでは誰もが休み…。
真っ暗なはずなのに何故か賑やかな我が家になる。
今、停電してない家よりも停電中の我が家の方が幸せな気がする。
ひと月後…。
広末さんは会社を辞めた。
理由は1時間おきに携帯を持ちトイレに閉じ込もるとおばさん達から苦情が出たからだ。
働けよ…。
当たり前に誰もが思う。
社長がため息を吐き専務が苦笑いをする。
結局は専務と話し合いをした広末さんが自分から辞めると言ったらしい。
「次の会社でもうちの会社でおばさん達からパワハラを受けた言うんやろな。」
宮崎さんがゲラゲラと笑う。
「宮崎さん…、事務室でおばさん達が呼んでたよ。」
「嘘や!?」
「経理で宮崎さんがまだ領収書を持って来ないとかなんとか…。」
「僕もパワハラを受けて来ます…。」
宮崎さんがダッシュで事務室に走り去る。
やはり、うちの会社は充分に賑やかで楽しい会社だと思うだけだった。