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呟き…
第1章 働けよ…
昨年の9月の事だった。
会社からパートのおばさんが1人、体調不良を理由に退職した。
その穴埋めにやって来た新人さんは私と同じ歳…。
中途採用というその人の事で何故か朝礼後に専務からの呼び出しを受ける。
「ちょっと訳ありの子なんや。森本さんは歳が同じやし気に掛けたってや。」
「いや、私は現場で彼女は事務ですよ?」
「まあ、頼むわ。」
前の会社で上司からパワハラを受けて働くのが怖いとか言ってるらしい。
「うちのオバハン達は怖いからな。」
私の上司である宮崎さんが下品に笑う。
「宮崎さん…、そういうのがパワハラだよ。」
「嘘やん!?勘弁してくれや。」
私の上司は能天気。
事務の状況まではわからない。
ただ翌日の事だった。
大阪に台風直撃という日。
工事部は自分のデスクで待機する。
お昼休みになりお弁当を食べる為の飲み物を買いに1階の事務室の隣にある自動販売機に行くとポツンと入り口に佇む女性が居る。
「どうかした?」
ずっと空を眺める彼女に聞いてみる。
彼女が事務の新人だ。
名を広末さんという。
「台風ですよね?」
当たり前の事を彼女が聞いて来る。
しかも安全マーク付き作業服の私を頭の先から足元までゆっくりと見下ろす。
自慢じゃないが私はチビだ。
だから、こんな風に人から見下ろされるのは当たり前に慣れてる。
なのに彼女は私が変な人だと言わんばかりの目付きで見る。
フワフワのロングスカートにヒラヒラのTシャツ姿の彼女の指は魔女の様に長い爪が付いてる。
「台風だよ。」
それだけを答えて自動販売機で無糖紅茶を買う。