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海猫たちの小夜曲
第2章 絶望の始まり ~海色のグラスと小麦色の少女①~
そして、あたしは高瀬さんと一緒に先生の家を出た。
先生という接着剤がなくなって、あたしは高瀬さんと普通に話ができるか、少しだけ不安だったけど、少しばかりの沈黙の後で、最初に口を開いてくれたのは高瀬さんだった。
「……あのさ、有坂さんって、あんまり水泳部に顔出さないけど、バイトが忙しいの?」
「うん、このところ月火以外は、シフト入れてるし……」
何となくバツが悪くて、あたしは黙ってしまった。
「あ、いや、別に、わたしは練習に来ないのを、責めるつもりじゃないんだよ。ただ、有坂さんて、平泳ぎでいい記録持ってんのに、もったいないなあ、って思って。」
それはよく顧問の先生にも言われる台詞だった。
お前はちゃんと練習すれば、もっと強くなれるのにもったいないぞ。
そう言われるたびに、あたしは自分の本心を隠して愛想笑いをしてきた。
あたしには、まだ人には言っていないけど、ダイビングのインストラクターになりたいという夢がある。
高校を出たら働くつもりでいるあたしにとって、今のダイビングショップのバイトはそのための一番手っ取り早い手段なのだ。
秀隆のことがあってから、バイト先が逃避場所のようになっているけど、本来、あたしにとってのバイト先はそういうものだった。
あたしの夢のことを高瀬さんに話してみるべきだろうか?
何をバカな、と鼻で笑われたりしないだろうか?
だけど、高瀬さんなら、茶化したりせず、真面目に聞いてくれそうな気がした。
そして、あたしは少しばかりの勇気を奮って、高瀬さんに自分のことを話し始めた。
先生という接着剤がなくなって、あたしは高瀬さんと普通に話ができるか、少しだけ不安だったけど、少しばかりの沈黙の後で、最初に口を開いてくれたのは高瀬さんだった。
「……あのさ、有坂さんって、あんまり水泳部に顔出さないけど、バイトが忙しいの?」
「うん、このところ月火以外は、シフト入れてるし……」
何となくバツが悪くて、あたしは黙ってしまった。
「あ、いや、別に、わたしは練習に来ないのを、責めるつもりじゃないんだよ。ただ、有坂さんて、平泳ぎでいい記録持ってんのに、もったいないなあ、って思って。」
それはよく顧問の先生にも言われる台詞だった。
お前はちゃんと練習すれば、もっと強くなれるのにもったいないぞ。
そう言われるたびに、あたしは自分の本心を隠して愛想笑いをしてきた。
あたしには、まだ人には言っていないけど、ダイビングのインストラクターになりたいという夢がある。
高校を出たら働くつもりでいるあたしにとって、今のダイビングショップのバイトはそのための一番手っ取り早い手段なのだ。
秀隆のことがあってから、バイト先が逃避場所のようになっているけど、本来、あたしにとってのバイト先はそういうものだった。
あたしの夢のことを高瀬さんに話してみるべきだろうか?
何をバカな、と鼻で笑われたりしないだろうか?
だけど、高瀬さんなら、茶化したりせず、真面目に聞いてくれそうな気がした。
そして、あたしは少しばかりの勇気を奮って、高瀬さんに自分のことを話し始めた。