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はなむぐり
第9章 はなむぐり



部屋に帰り着くと、先に明かりをつけてカーテンを閉めてゴミを捨てた。蜜樹は持ち帰った2枚の赤い葉を私の辞書の間に挟み、お風呂のお湯を溜め始めた。二人で手洗いとうがいを済ませ、お湯が溜まるまでゆっくりすることにした。夕飯は蜜樹がお昼に作ってくれたシチューがあるから、それを楽しみにしている。

蜜樹が着替えている間に、兄に手を合わせて話しかける。兄のそばにはいつでも花があり、桜の花の絵がかすれてきたお祝いの袋がある。蜜樹の高校入学のお祝いに渡したが、大切なものだからと中身もそのままで兄が預かってくれている。今日も一日ありがとうと。

「やっぱり、このままでいる」

振り返ると、白いタートルネックセーターのワンピースを着たままの蜜樹がいた。

「うん。よく似合ってるよ。可愛い」

「ありがとう…なっ…何か飲む?」

目を泳がせて台所に向かう蜜樹の手首を掴み、抱きしめた。

「蜜樹…お風呂に入る前に舐めていいかな」

セーター越しに身体を触りながら囁くと、腕の中でびくんっと身体が跳ねた。

「だって…汚いしっ…もうっ…智さんがキスなんてするからぁ…んふ…」

顎を親指と人差し指で掴んで上げさせ、深く口づけた。
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