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はなむぐり
第3章 膨らむ蕾



咄嗟に肩を掴んで突き飛ばすように離してしまった。

蜜樹は床に倒れたまま下唇を口の中に隠し、上唇が血で滲んでいた。

「大丈夫か…蜜樹」

蜜樹を抱き起こそうとした両手は石のように固まり、声をかけるしかなかった。

「大丈夫…遅くにごめんなさい。お祝い…やっぱり受け取れない」

早口でそう言うと自分の肩を抱きしめながら玄関へ走った。

「蜜樹!」

買ったばかりであろう黒いローファーを履きもせず片手で持ち、靴下のまま部屋を出て行った。

エンジン音がかすかに聞こえ、しだいに遠くなった。

桜の花が描かれたお祝いはテーブルの脚のそばにあり、身体はまだ蜜樹を抱いていると錯覚するほど熱かった。

『キスして…』

なぜだ。

一方的な思いは私だけだ。

勝手に右にそれ、抑えても抑えても臍まで届きそうなモノが。

自分の唇を舐め回しかすかな血の味を口いっぱいに広げ、一瞬のぬくもりを味わう。

「はあはあはあ…蜜樹…蜜樹…」

蜜樹が正座していた場所に顔をくっつけ、床を撫で回す。

ダメだ。

蜜樹で自慰してはならない。

いつもは…たとえば関係のない芸能人を思い浮かべてするが、最後には蜜樹を。

裏側になっている写真立て。

「兄さん…うぅっ」

無意識に突き出していた尻がびくびく痙攣し、触りもせずに精をたっぷり吐き出していた。
下着がぐっと重くなり、ぺったりと布が張り付いているのが分かる。

「はぁ…蜜樹…蜜樹…蜜樹」

鼓動と脈、自分の息で部屋がうるさい。

蜜樹、冗談だと笑ってほしい。

おじさんをからかっただけだと。





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