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はなむぐり
第3章 膨らむ蕾
大切なものだから奥へしまっていたな。
引き出しごと取り出していると、カタンと音がした。
振り返るとテーブルにある写真立てを手にたたずむ蜜樹。
「お父さんとおじさん?」
嬉しそうに私の隣にちょこんと座り、写真を指差す。
「そうだよ。似てないだろう。ずっと格好良かった。確かこのときは5歳…6歳じゃなかったかな」
「ううん。二人とも格好良い。おじさん、私が来るときも写真立て置いて大丈夫」
蜜樹は無邪気に笑ってそう言うと、写真立てを裏側にしてテーブルに戻した。
蜜樹が遊びに来るときは写真立てを引き出しにしまっていた。私が気を使っているのだと思ってしまったのだろう。
「いや…どうもずっとは見られなくて。大人気ないだろう。夜に見て話して…あったあった。蜜樹」
桜の花が描かれたお祝いの袋がやっと見つかり、いつの間にか正座をしている蜜樹の前に私も正座した。
「少しだけど、おめでとう。よく頑張った」
両手で渡すと、小さく頷いて両手で受け取ってくれた。
「ひとつだけ、もうひとつお祝いがほしい」
緊張した表情で滅多に言わないお願いを口にした。
「分かった。何がほしい?」
私は胡座を掻き、俯く蜜樹を覗き込んだ。
「キスして…」
そう言い終わらない内に熱い唇が重なっていた。