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はなむぐり
第4章 誘う香り
カゴを手にクーラーの効いた店内へ。いつも通り惣菜コーナーから回り、つい脂っこい唐揚げやあんがかかった揚げた魚を入れ、気休めの小さなサラダを入れた。それから中性脂肪に効くお茶も買い、レジに並んだ。
すると、雑踏の中でひときわ通る声に身体が反応した。蜜樹の声に非常に似ている。列から外れ、順番にレジを見ていった。
レジ番号3番に、学校の制服の上からお店のエプロンをしている蜜樹が働いていた。
久しぶりに見る蜜樹にカゴの取っ手を握る手は汗ばみ、喉が鳴った。
唇を合わせてしまった日以来、入学祝いで両親とともに外食をしたり、夏休み中に何度か実家で顔を合わせただけ。
お互いにそのことには触れず、平静を装ってきた。
しっかり働く姿に目が熱くなり、つい蜜樹のレジの列に並んでしまった。